“バズる”動画PRのヒント
私は、昔からミュージシャンのMV(MUSIC VIDEO)を見るのが好きである。
中学生・高校生のときから、土日祝に時間があるときはMTVやスペースシャワーTVを見て、大学生ぐらいからYoutubeを見まくって徹夜でテストを受けてたりしていた。
音楽も好きなのだが、何よりも歌詞のストーリーを映像で表現し、視聴者の“共感”を生ませるクリエイティビティな部分に感動し、酔いしれてしまうのだ。
そして、自分の中に数々のミュージシャンをストックし、カラオケなんかの機会で爆発させることがある。
そこで、最近話題の「MUSIC VIDEO」という曲をご存知だろうか?
MVを愛してやまない感情をストレートに表現し、ある意味、現在の音楽界の人たち全員を敵に回すかもしれない楽曲である。
まずは、動画を見て頂きたい。
どーですか?
もはやディスりの極みでしょ笑
でも、音楽愛が素晴らしい。
そして、世の中のだれもが潜在的に感じている分かりやすいMVのあるあるを全面に歌うことで、“共感”を得ている素晴らしい作品。
MV公開後、沸々と人気が出ており、今では国内ナンバーワンのポータルサイト「Yahoo!ニュース」にも取り上げられ話題になっている。
ミュージシャンはメジャーデビューするとMVを作るのがセオリーなところがありますが、企業(団体)も自社の紹介をする際、会社案内のパンフレットやチラシ等だけではなく、動画PRを使う企業が増えてきた。自治体なんかも観光PRやインバウンド施策の一環として、動画PRを積極的に展開している。
そこで、ここ最近の動画PR成功事例を紹介しつつ、バズる(拡散する)動画のヒントを探りたいと思います。
①宮崎県小林市「ンダモシタン小林」
宮崎県小林市が移住者獲得を目的に制作したプロモーション動画は、日本語の難しさを逆手に取った秀逸な作品となっている。
1人のフランス人らしき人物が小林市に訪れ、小林市の自然の豊かさ、人の温かみ、食などの魅力に触れ、結果、小林市に移住してしまった、といった一見すると単純なストーリーですが、動画を最後までご覧いただくと衝撃の事実が…
②大分県 おんせん県PR「シンフロ」
源泉数・湧出量日本一を誇る大分県は、「おんせん県おおいた」の魅力を新しい観点から伝えるべく、プロのシンクロナイズドスイミングチームと本県に実在するバラエティ豊かな温泉を掛け合わせた動画を制作。
本来、温泉でバシャバシャ水しぶきをあげるのはご法度ですが、もぉバシャバシャレベルではない。シンクロ選手がいれば、そこは温泉ではなくプールに変わるのだ。いや、プールでも宙返りしたあかんけど。
最後のコピーも素晴らしい。
“日本一の温泉で、世界のみんなを沸かせたい”
【おんせん県】「シンフロ」篇 フルバージョン SHINFURO:Synchronized Swimming in Hot Springs
③岐阜県関市「もしものハナシ」
岐阜県関市は、日本一の刃物のまち。包丁、ハサミ、カミソリ、爪切り等々の生産が日本一であり、もしもこの国から刃物がなくなったらこんな世界、というフィクション動画になっている。これが公認動画なのかと疑うレベルだが、ここまで振り切る自治体にはアッパレである。
ここまでの動画で共通するキーワード、それは「ツッコミどころ」がある点である。
今の時代、動画のほとんどはYoutubeにアップされ、Youtubeを見た視聴者は、その動画が面白い面白くない問わず評価をし、YoutubeのページからダイレクトにFacebookやTwitterで共有できる。
そこで共有されやすいキーワードは、やはり「ツッコミどころ」なのである。そのツッコミどころはただ単に自虐に走ったり、ネタを振り切るということではなく、何をPRしたいのか目的を明確にした上で1つのメッセージを確立させ、視聴者にリアクションしてもらえるような要素を盛り込む必要がある。
次に、昨今の観光PRで良く耳にする「インバウンド」目線でのPR動画も秀逸である。
④福岡県柳川市「SAGEMON GIRLS」
福岡県南部に位置する柳川市は、毎年120万人以上の観光客が訪れる九州を代表する観光地である。詩聖・北原白秋の故郷として知られ、今年1月の初場所で日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした大関・琴奨菊の出身地でもある。日本情緒あふれるアクティビティや史跡、街並みが人気を集め、近年は特にアジアからの外国人観光客が急増しており、2014年は外国人観光客が9万人を突破、2016年は10万人以上の来訪が見込まれている。
そんな柳川市の魅力をこれまで以上に国内はもちろん、広く世界に発信するため、外国人にもウケる動画として作成したものが『SAGEMON GIRLS』である。柳川地方では、昔から女の子が生まれると初節句に子どもの健やかな成長を願い、雛壇と一緒に色とりどりの「さげもん」を飾り、盛大に祝うのが習わしだそうで。
一度みたら忘れられない、キャッチーでついマネしたくなる「さげもんダンス」は、世界的に有名なコリオグラファーユニット「振付稼業 air:man」によるもの。
テクノポップの音楽に乗せ、かわいらしいダンス+柳川市の観光地をパッパッパッと載せていく感じ。
言葉は使わず、映像を見てるだけで柳川市の魅力を表現しているので、日本語がわからない外国人であってもついつい見てしまう動画になっている。
【柳川市観光PRビデオ】SAGEMON GIRLS さげもんガールズ
最後に、個人的にここ最近で最高の自治体PRプロジェクトと思う福井県大野市の事例を。
福井県大野市では、高校を卒業すると市外へ進学、就職してしまう若者の過疎化が問題となっている。そこで、いつか市外へと旅立つ高校生に、旅立ってしまったかつて高校生だった若者たちに、いつか大野へ帰ってきてね、と大人からのメッセージを伝えるプロジェクトとして始動。
このプロジェクトは3段階形式で、第1弾は高校生による大野の魅力を発信する「大野ポスター展」、第2弾が地元で活躍する大人たち数名による高校での講演、そして第3弾が「大野へかえろう 楽曲プロジェクト」。
「大野へかえろう」というオリジナルソングを作り、それを卒業式に父母から生徒たちへ歌ってもらおうというもの。
親は「帰ってきてほしいと思っているけどなかなか言えない」という事実があり、でも最後には「帰ってきてほしい」と言ってしまうが、それが就職のタイミングで、今更言われてもどうしようもない。そこで、大人たちが声を大にして「帰ってきて」とお願いすることは新しい試みである。
歌詞、メロディが本当に心地良く、大野市に何のゆかりもない自分だが、不覚にも泣きそうになってしまった。
こーゆー人の心を動かす仕事、もっとしたいなぁ~…
大野へかえろう 卒業式プロジェクト (full version)
ここで紹介した他にも地方の自治体は、今、本当にPRにチカラを入れている。ゆるキャラブーム、B級グルメ、そして動画PR。
次のブームはどういったものになるのか。
そのブームに携わっているように自分ももっと勉強して頑張ろう。